1.日時
平成21年3月16日 月曜日 10時から12時
2.場所
中央合同庁舎7号館東館 文部科学省3F2特別会議室
3.議題
- 教育研究体制の在り方について
- その他
4.出席者
委員
唐木座長、酒井座長代理、石黒委員、伊藤委員、加地委員、片本委員、廉林委員、小崎委員、境委員、長澤委員、政岡委員、矢ヶ崎委員、 山崎光悦委員、山崎恵子委員、山田委員、山根委員
文部科学省
戸谷高等教育局担当審議官、藤原専門教育課長、坂口専門教育課企画官、德岡専門教育課課長補佐、南野専門教育課課長補佐 他
5.議事要旨
(○:委員 ●:事務局)
(1)事務局から資料説明の後、資料5に基づき自由討議が行われた。主な発言は以下の通り
○ いつも議論の中で国際通用性の確保が論点にあがるが、日本国内で要求されている獣医学教育についてはどのように考えるか。私自身は、獣医師に対する要求は国によって違うと思っている。アメリカでは臨床教育に特化しすぎて、臨床業務を担っている教員は基礎研究の分野ではあまり活躍していない。日本の場合は基礎教育・基礎研究の部分で活躍する教員が多いので、その特徴を活かしながら議論をした方がよい。
○ 日本では企業や研究所等の法人で4,000人ほどの診療非従事獣医師が従事している。製薬企業の研究者2万人の内約1割が獣医師だと言われている。生理、生化、毒性、病理あるいは動物の内科について学習した獣医師は、動物に薬を投与したときにどういう毒性を示すか把握できるため、研究所や製薬会社における薬の安全性の検査部門で活躍しているが、これは他の国ではあまり見られない特徴である。
○ 獣医学教育はライセンス教育にフォーカスを当てるべきであるが、6年間で日本固有の獣医学教育を目指すと同時に、国際通用生の確保についても議論もしなければいけない。
また、学士課程を終えた学生が入学し臨床を中心とした教育を受ける米国型の教育体系を目指すか、入学定員を広く受入れた後に出口の部分までに絞っていくヨーロッパ型の教育体系を目指すのか、学生の受け入れ先も踏まえた議論を進めなければならない。
○ 日本型の獣医学教育の体系は、戦後陸軍の消滅とともに産業動物の中心だった馬がほとんどいなくなり、獣医師の仕事もなかった時代に戦前の専門学校がそのまま新制大学になった形で形成された。診るべき家畜もいない中で獣医学科が生き延びるためには、基礎分野に力を入れざるを得なかった。そのため、現在でも日本の獣医学教育は基礎分野が半分以上を占めているという、海外と比べると異常な状況になっている。基礎分野が大事なことは理解した上で、臨床分野と公衆衛生分野が極めて弱い日本の状況をどうするのかといった方向で日本型の教育体系を考えていきたい。
○ 公衆衛生分野に関して、欧米ではパブリックヘルスや食品衛生の専門分化が進んでいるが、日本の教育体系にはそうした専門家の養成ルートが少ないので、実際問題として獣医師がカバーしているという現実を見定めて議論をしていかなければならない。
○ 今日示された論点は全て専門教育にフォーカスが当てられているが、教養教育も含めた学士課程の構築をどうするのかという部分を含めて議論していく必要はないか。
○ 論点例に、先端的な取り組みが拡大する分野の例示として公衆衛生分野が挙げられているが、公衆衛生分野は従来から社会的ニーズの高い分野である。
また、国際通用性の確保とあるが、国際的な貿易関係、動物検疫はいずれの国も獣医師が、国際獣疫事務局等のアニマル・ヘルス・コードに基づいて行っているため、学問的内容のみならず獣医師の資格としての国際通用性が必要とされている点も含め議論していく必要がある。
○ 国際通用性というのも、現実の問題としては、WTO体制の下、各国の食品の安全の問題あるいは動物の伝染病の問題に深く関わるという意味で、国際的なレベルを確保しなければならないという要請が非常に高い。
● 先端的取り組みと書かせていただいたのは、例えばリスク評価等の分野は各大学で教員の確保が難しいという指摘をいただき書かせていただいたが、ご指摘を踏まえた形で考えていきたい。
○ 確認であるが、大学の設置基準は動かさないという前提で論議を進めるのか、あるいは獣医学教育の設置基準を改正することも含めて論議を進めるのか。
● 設置基準改正は、ほかの分野とのバランスも必要であるので総合的に判断する必要があるが、議論をした上で、必要に応じて設置基準の改正というのもあり得ると考えている。
○ 獣医学教育は農学教育の一部から類医学教育の一部になりつつあることを認識しながら議論するべきである。臨床分野では小動物も大動物も含めた分野を担っているし、衛生分野では食品衛生、環境衛生、家畜衛生といった分野を担っていることを考えると、獣医学教育は農学教育から類医学教育に移行しつつある。
また、卒業後の臨床研習の充実を考えれば、獣医師法では6カ月間の研修に努めると規定されているが、医学教育のように義務化する等の整理をしていかなくてはならないと思う。
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○ 獣医師法16条の2の基礎研修の努力規定に関して、農林水産省では従来から卒業後の臨床研修について補助事業を組んでおり、平成20年度から22年度まで3年間で3億4千万円の予算で、日本獣医師会と社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会にご協力いただき、大学や家畜共済組合の診療所と協力した研修を補助している。
また平成20年度から現役の大学生を対象に、産業動物中心の臨床研修を行うための講師謝金や旅費、宿泊費の全額を補助する事業を行っている。
○ 獣医師のライセンスの中に限定ライセンスを設けて、小動物・大動物のライセンスや公衆衛生等の行政用のライセンスを設けることは考えられないか。全てを教育することが困難であるならば、教育範囲を限定して深く教えることはできないのか。もし、そういうスタートラインで議論してもよいなら、解決策は広がると思うがどうか。
○ 今、例えば産業動物と小動物で、獣医師のライセンスを分けている国は、私の知る限りでは無い。獣医師には広い知識が必要とされるため、国家試験でも小動物と産業動物とが同数程度出題されるよう試験を実施している。
○ 国際通用性というのは、ある部分では必要であって、日本は日本独特のやり方が必要な部分もあると考えている。
○ Veterinary Medical Associationか、Medical School Associationのレポートで、アメリカでも今の日本で我々が直面しているのと同じような状況があり、それをどう解決していくかという議論の中で、専門分野別ごとの国家試験を考えてもいいのではないかという議論が起こっている。そういう意味では、コアの部分はきちっと共通する内容を教育しなければならないが、そこから先の専門教育あるいはライセンスも視野に置きつつ議論をしていくことに意味はあると思っている。
○ 獣医師養成と獣医学教育はおのずから差がある。獣医学教育の中で、ライセンスを絞った教育を行うことにはノーと言わざるを得ない。大動物と小動物は切り離せず、オーバーラップする面がたくさんあるため、共通教育の中でいずれも教育すべきだと考える。獣医師になった後に専門分野へ進む際に、特化した教育を行えば良いと考える。
○ 専門性でライセンスを分けている国家資格として、ソーシャルワーカーとPSW(精神保健福祉士)がある。精神科の特殊な分野において、ソーシャルワーカーの教育だけでは足りないという要望からPSWの資格がある。獣医師のライセンスを分けることも制度として変えていくことは可能だと思う。
また、学部教育は非常に重要であり、アメリカでは学部教育でリベラル・アーツを身につけた上で獣医学の専門学科に進学している。国際通用生を確保する上ではリベラル・アーツが重要な部分であるが、日本の大学教育の中ではリベラル・アーツが最も弱い分野である。獣医学教育課程においても、獣医師や動物に関連した法規の不備や動物福祉がどのように貿易障壁につながるか、そうなった場合に国はどういった被害をこうむるのか、動物に関連した法律でどのような改正が望まれているのかなどといったアニマル・リベラル・アーツが最も欠けている部分である。実際は獣医系大学よりも動物看護学校や動物科学系の大学のほうがアニマル・リベラル・アーツに重きを置いている。こうした学校との連携は、獣医学系大学にア� ��マル・リベラル・アーツの部分で国際通用生を確保する手段として有効であると考える。
○ カリキュラムの問題は小委員会で検討が始まっているので、ぜひ今の意見を参考にいただきたい。
○ この会議は、どういう基準をもって獣医学の教育の改善に資するのかがわからない。論点には大学間の連携を一層強化する必要があるとの指摘があると書いてあるが、緩やかな連携策を模索するのか、再編整備を前提としてカリキュラム等を議論をするのか、それが全く見えてこない。みんな心の中では国立大学の再編しかないと思っているのに、これだけの人材を集めて、ガス抜きの会議にしてしまうのは非常にもったいない。国立大学の再編に向けて堂々と旗を揚げて議論していくべきである。
○ 私はもう30年以上獣医学教育の改善を議論を行ってきたが、その中で感じるのは、関係者の思いと社会の獣医学に対する要望の間には非常に大きな乖離があることである。それをどうやって埋めていくのかが最大の問題である。
この会議は、関係者にとっては従来何度もされた無駄な議論の積み重ねをしているように見えるかもしれないが、社会に向けてなぜ獣医学教育を充実させなくてはならないのか、現状ではどこが足りないのかを丹念に積み上げていき、説明責任を果たしていくと言う意味では非常に重要な議論を行っている。
○ 日本獣医師会の会長を4年近く勤めてきて、行政の説明責任、政治家の説明責任、社会に対する説明責任、さらに企業に対する説明責任、最後に獣医師にも配慮をしなければならない。この5つの観点から4年間努力してきが、今日、気運が高まってきたと感じている。この機会を逃しては改革はできないと思うので、座長としても前向きに考えていただきたい。
○ 大学間の連携については、既に20年近くも連合大学院による大学間の連携を行ってきたが、非常に広域の連大の中で学生や教員がお互いに動けるような仕組みがないため本来の機能を十分に果たすことができなかった。そういう意味での失敗を繰り返さないための議論を行うことが大学間の連携を議論する上での基礎にある問題である。
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ただ、最初から獣医学系大学の再編を議論することには、やはりまだアレルギーが非常に大きい。再編しかないの一辺倒ではこれまでの失敗を繰り返すだけなので、連携と再編の両方考えながら、最終的に最も良い形に近づけていくために知恵を出したい。どういう論理を使って、あるいはどういう道筋をたどればそこに行き着くのかをご議論いただきたい。
○ 連合獣医学研究科の研究科長として、連大が失敗と言われるのはつらい。岐阜大学の連合大学院ではこれまでに、300人以上の博士号の学位を出している等の成果を出している。緊急避難的な措置として設置されたまま、あまりに長い時間継続されているというところに問題があるが、関係者の努力で業績も上がっている。
○ 条件が整っていない中で、連合大学院がすばらしい業績を上げていることは分かるが、非常に非効率な教育を行っているよう感じる。失敗ではないとしても、今のままで良いとは思わないので改善点を議論して行かなくてはならない。私自身も連合大学院の教員として他大学の教員との議論を通して勉強をさせてもらったし、構成大学の学生の交流など、良い面もたくさんあるが、そろそろ改革を行わなくてはならない時期にさしかかっていると思う。
○ 連合大学院は緊急避難で始まったもので、できるだけ早急に解消すべきものであったが、永続的な形になってしまった感がある。実際に連大では先生方が必死になって努力して多くの卒業生を出していることは承知しているが、これが大学院における獣医学教育の理想の形とは言えない。
○ 獣医学教育は学部教育であるが、学部段階での連携には着手されていない。今必要なのは、勇気を持って獣医学教育の改善策と数値目標を設定することである。数値目標を設定しなければ同じことの繰り返しで時間が経過してしまう。
○ 自己点検評価や工学系で言うJABEEのような外部評価の在り方についてはいつ議論するのか。
● 初回の会議に評価に関する論点も出させていただいたように、現在、大学全般に関して分野別の評価を重視する方向にある中で、当会議としては次回に評価の仕組みについてもご議論いただきたいと思っている。一方で学術会議でも、分野全般的に議論が始まろうとしている。
○ ライセンスのシステムが変更になるかどうかというのは非常に重要で、システムが変わる可能性があるかないかによってカリキュラムが抜本的に変わってくる。今のライセンスシステムが変わらない前提で充実を考えるのか、変える可能性もある前提で考えるのかによって、議論が大きく変わってくる。
○ 従来より基礎と応用と臨床の3つを兼ね備えていないと一人前の獣医師とは言えないとの合意があり、それを前提に現在のカリキュラムが組まれている。基礎がなければ応用も臨床もあり得ず、大動物臨床を知らなければ公衆衛生はわからないというように、3分野が深く関わり合っているため、6年間の教育の中で3本柱を崩すことは考えにくい。
○ 基礎・応用・臨床の3本柱は崩すべきではないと考える。それに加えて、アニマル・リベラル・アーツというような部分も含めて考えていかなければいけない。そうした基盤の部分にある共通教育の上に専門性という部分があると思うが、今のライセンスの在り方は、全領域にまんべんなく一定水準を求めるという考え方である。そうすると、全体をまんべんなく底上げしなければならず、非常に難しい。例えば、一定水準でライセンスを与えた上で、それ以上の専門性については別のライセンスに与えるといったことは考えられないか。
○ 今のところ、専門医は専門の学協会が認定しているので、国家資格にしなくてもよいのではないか。
○ 医学教育の専門医制度も学協会が認定しているが、結局、学協会の活動に参加することによって認定される仕組みになっているため、技量や知識が評価されて認定されているわけではないという議論もある。私は小動物と産業動物のライセンスを分けるべきとは思わないが、例えば公衆衛生分野では臨床の細かい知識がなくても成り立つので、公衆衛生を専門に担う獣医師の国家認定といったシステムを考えても良いと考える。
○ 獣医学教育のコアの部分に加えて、各大学の特徴として大動物や公衆衛生を得意としている部分は既にある。それを国家試験に結びつけるかどうかはよく検討しなければならない。国家試験はあくまで獣医師として求められる最低条件であるので、それ以降の部分については、教育の問題と国家試験の問題とを別に考えたほうが良い。
○ 獣医学教育の質の最低保障をどうするかというのが重要な問題である。制度の運用の中で、例えば開業医試験を実施するのか、専門医制度を導入するのかという点は別の場所での議論になる。この会議では、我が国の獣医学教育の質の保障をどのように担保していくのか、獣医学教育をどのように向上させていくかという議論に絞ったほうが良い。
○ 公衆衛生分野に従事する獣医師であっても食品の安全性や動物由来感染症の行政分野では、大動物臨床を始め、基礎、解剖、薬理、病理、毒性も含めた幅広い知識が必要とされるため、6年間の教育内容を充実させて、そうした知識を幅広く教えることが必要である。
学部教育を充実させてほしい一方で、ヨーロッパやアメリカの公衆衛生分野の獣医師はMPH(Master of Public Health)で、医学や看護学の出身者とともに公衆衛生を学んでいる。大学院教育を考えるのであれば、MPHのような上乗せの専門教育を考えることも必要。
継続教育は、看護師のスキルを向上させるん。
○ 以前は、4年間の獣医学教育を受けた後に国家試験を受験して獣医師になっていたが、現在は6年間の獣医学教育で間延びしている感がある。以前のように4年間で幅広く獣医学を学んだ後に、5年目には臨床や公衆衛生等の職域に対応した教育を受け、6年目には研究も含めた卒業論文作成を行うといった、幅と厚みのある大学教育を行っていただきたい。獣医師国家試験については、獣医師として必要な診療と公衆衛生の基礎的な知識及び技能を問うために実施しているため、ライセンスシステムを変更して獣医学教育を改善させるという方法をとることは考えにくい。
○ 社会から求められている分野の充実という観点からライセンス化が考えられないかと提案したが、何が何でもライセンス化すれば獣医学教育が充実するとは考えていない。獣医師には幅広い知識がもとめられるので幅のある獣医学教育が必要とされるが、最終的に職業に従事したときには専門性が求められる。
公衆衛生全般が非常に重要だと言われながら、今の各大学の非常に貧弱な教育体制では必要な教育内容を全て教育できない。公衆衛生分野に限らず、大動物分野、小動物分野、基礎分野をそれぞれ今以上に充実させ、さらにアニマル・リベラル・アーツを教育するためには再編・統合しかないという議論になるが、カリキュラムをどういったものにするのかをある程度押さえて議論しなければ、非現実的な議論になってしまう。
○ 182単位の中で、一般教養やアニマル・リベラル・アーツも含めた教育を行うには、一般教養や専門基礎の中で必要な教育を行ったり、非常勤の講師を活用するという方法も考えられるが、各大学にはキャパシティーの問題があるので、本当に必要な教育内容があるのであればカリキュラム上の問題として議論をすべきだと思う。
○ 関係者の間でカリキュラムの議論は何度もされており、いくつかのひな形もできているが、基本的な考え方としては、基礎・臨床・公衆衛生という3つの柱の中からコアの部分を押さえ、そのほかに各大学が事情に応じて対応する選択科目を挙げたものとなっている。
○ 教員数というのは、当然専門性を持っている教員と理解するのであれば、論点案に専門性を備えた一定数の教員を確保することが求められるとあるように、今の設置基準の教員数ではやはり十分ではないという理解で良いか。
○ 設置基準の教員数では十分でないという認識は共通の理解としてあるだろう。設置基準というのは最低基準であって実態とはかけ離れているため、設置基準の教員数を満たせばそれでよいとはならない。問題は新たに獣医学の設置基準を改定する必要があるかどうかである。
○ 獣医学教育に対する社会的ニーズが高まっており、教室や講座を増やすために、助手を教員に振り替えていった経緯があるが、助手や今でいう助教というのは教授の研究を助けながら教員としての訓練を積むシステムであると考えている。近年は後継者不足が問題視されており、後継者を育成し講座を継続させていくためには、どうしても各講座に3人は必要であると考える。
○ カリキュラムを実施する上で必要な教員数とともに、後継者の育成についても別の問題として考えていかなくてはならない。
○ 6年間182単位の中でどれだけの教育ができるのかを我々は考えているが、それが社会のニーズに合った教育になっているかというとなかなか評価が難しい。色々な分野の先生方の意見を聞いていると、過大な要求が獣医学教育に課されていると感じる。6年間で社会から求められる全てを教えることができるか考えたとき、別の養成システムも考えざるを得ないだろう。そうしたときに、米国型の4年間の専門教育というものがモデルとして検討することができる。
○ 6年間で182単位というのは、さほどタイトではない気がする。ただ、教える側がどれだけの専門性を持つかどうかが問題である。
○ 現状のままでは6年間で182単位というのはタイトではないが、学士課程の構築の要請に応えた充実したカリキュラムを考えて、そのカリキュラムに合った授業時数を考えていかなければならない。そうすると専門教育の単位数を削らざるを得ない状況が出てくる。
○ 枠組みをどうするのかというのは大きすぎる問題なので急にはできない。まずは現状のシステムの中で、日本の獣医師あるいは獣医学教育の在り方を見据えたカリキュラムを考え、その結果、教育システムの変更しかないという結論に達すれば検討すればよい。
○ 編入学制度が既に各大学にあるので、獣医師として多様性を求めるならばこの割合を増やせば対応できる。カリキュラムの中で重要なのは課題研究・卒業論文をどうするかという議論もある。これは6年制教育になったときに、解決しなければならない問題であったが、現在も卒業単位数の中に含まれている。小委員会でご議論いただきたいが私は既に廃止の時期に来ていると思う。
○ 小委員会に多くの宿題をいただいたが、やはり獣医学教育の最大の問題は教員組織の小ささである。我々は一般教養、農学部の学部共通教育、専門教育、大学院教育、さらに社会貢献、留学生受入れを背負っている。教員組織をもう少し大きくしなければ国際通用性の確保はあり得ない。
しかし、教員を増やすだけではなく、教員の考え方が変わらなければ駄目だと思う。例えば、1大学3人程度を海外に5年間送り出すようにすれば大学はずいぶん変わる。今の大学の教員は出身者が7割から8割を占め人が動かないが、これでは改革は進まない。組織や人、獣医学に対する社会の考え方が変わらなければ、カリキュラムだけを変えても解決しないと思う。
岐阜大学は平成20年度から大学院GPにより徹底した語学教育と学生の海外派遣、コミュニケーション力の強化に力を入れている。日本国内の感性だけでは国際通用性は生み出されないと思っている。
○ 何の目的でこの会議を開催しているのか、まず人数を増やす議論をしてそのためにはどうしたらいいのかを議論しないと、ガス抜きで終わってしまう。もう少し具体的な案を挙げてベクトルを定めた議論しなければならない。
○ 獣医学特有の問題と大学が抱える問題が混在している。この2つは互いに密接に関係しているので分けがたいが、まず獣医学教育特有の問題から考えていくべき。
○ 農学部の学部長をやっている立場から申し上げると、学部の中に4年と6年の学科が混在しているということは、会議や一般教養に関して多くの例外規定設けなければ運営できないなど、制度上いろいろな障害が出てくる。やはり獣医学教育は学部単位で行うべきであると考える。
○ 海外で専門医資格を取得した獣医師が日本の大学で採用されなかったという話を多く聞く。海外で獣医学教育を受けた獣医師が日本で就職しようとする場合、非常に塀が高いと感じているがどうか。
○ 日本の大学は論文至上主義の業績評価を行っているため、どれだけ経験や実績があっても論文数の少なさで採用されない。農学部内に獣医学科がある限りこうした状況が続くのではないか。
○ 教員の意識改革ということに関しては、大学関係者の中で議論を続けていくしかない。獣医学科が小さすぎるという問題に対して以前は自助努力という形で対応してきたが、近年は大学間の連携という形で補助事業があった。さらに昨年設置基準が改正され、複数大学による共同学科の設置が可能になった中で課題をまとめたので紹介させていただく。
まずは学部と大学院の在り方について、学部教育と大学院教育を一体のものと考え既存の大学院も学部にあわせて新たにつくり直すのか、学部のみを共同設置して既存の大学院を使うのかという点がある。
次に入学試験に関して、入学試験を共同で行うことが望ましいとあるが、これはかなり難しい。各大学がポリシーを持って入学選抜を実施しているため、入試の枠組みを変えて行わなくても良いのではと思う。
また、学生は共同課程の開設した31単位以上の授業科目を履修する必要があるが、31単位以上の授業科目の実施について、学生を移動させて履修させるか、それとも教員を移動させるのかという点が大きな問題になる。さらに、複数の大学が共同で学部を設置した際に、もともとあった大学の独自性をどのように発揮するかという点が次の問題になると感じている。
○ 共同学部の設置は、連合大学院の教訓を踏まえると、できれば1カ所に設置しなければ十分な機能はしないだろうと感じる。ただ、最終的な青写真がなければ大学間の話し合いはできないだろう。
○ 大学連携に関しては、GPによる教育連携等の延長上に共同学部設置があると感じている。
○ 現場の獣医師には、例えば動物取扱業の登録責任者や身体障害者補助犬、てんかん発作予知犬等といった、ベーシックな動物情報というのが非常に欠落している。多くの国家資格の補助者にサポートされる医師の教育においても、ベッドサイドマナーや模擬患者を用いた授業があるが、担当できる教員の不足の問題から、獣医学のカリキュラムの中になかなか反映されない。獣医学部に限らず教員採用時や大学設置申請の段階で一定の研究実績がある教員でなければ採用できないというのが日本の大学の現状である。
○ カリキュラムを検討する大前提として、基礎・臨床・応用という3本柱をベースに検討し、その中でコアの部分と各大学が選択できる部分に分けて考えということで進めていきたい。カリキュラムができた後に、それを教示するのに必要な教員数や獣医学教育の理念上大学に必要とされる教員組織の規模の議論がある。そして、それを実現するためには、1つは大学設置基準の引き上げ、もう一つは外部評価の実施である。カリキュラムができれば、それに沿った教育ができる組織なのかどうかを評価システムができるのではないか。
● 本日はさまざまな議論をいただき、6年制の仕組み自体を変えるという議論もいただいたが、将来的にそうした議論を排除するものではないが、差し当たり喫緊の獣医学教育の改善点に焦点を絞りながら議論を進めていただきたい。その中で理想的な教育の在り方を1つずつ積み上げて、中教審に上げていくような議論をすることがこの会議の課題である。最終的に設置基準の改定や統廃合という話もあったが、これはまた別のファクターがあるので、色々な状況を考えながら総合的に判断せざるを得ないという部分がある。この会議ではそれらの前提として、きちんと積み上げの議論を行っていくことが第一ステップであると考えている。
(2)事務局から次回の日程について説明があり、閉会となった。
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