先日、「歌わせたい男たち」という演劇を観ました。(略)
終演後にパンフレットを買ったのですが、そこに世界の「国歌斉唱」事情というページがありました。
「これからの国際化時代、自分の国の国旗国歌を大切にできないで、相手の国を尊重できるだろうか」とよく推進派が書いているのを目にします。しかし、国旗国歌の深い意味を考える機会を与えられず、外国の事情も知らされず、ただ「きまりだから」ということで国旗国歌に接して育つことが、他国への理解とどうつながるのか、私には意味不明です。
とりあえず、そこに書いてあった各国の事情を転載します。取材・文は安藤ゆかさんという方です。
<アメリカ合衆国>
学校では:各州の判断に任されている。
「Pledge of Allegiance(国旗に向かって忠誠を誓うこと)」は広く行われている。
メモ:第二次世界大戦中、"Pledge〜"を拒否した生徒が退学になったのは憲法違反だとする「バーネット判決」が出され、戦後もこの判例が尊重されている。
コメント:「息子の学校では子ども一人ひとりがちゃんとやっているか、誰も監視したり強制したりしてはいません。ぼ〜っと立ったまま、何も唱えていない子もいますね」。
「うちの学校は生徒の70%がヒスパニック系だし、校長も中国系のせいか、国歌斉唱"Pledge〜"など一切ありません」。(子どもをアメリカの小学校に通わせている母親)
<英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)>
学校では:入学式・卒業式といった「式典」がない。行事での国旗掲揚・国歌斉唱はない。
メモ:「女王陛下万歳」が国歌とみなわれているが、実は正式な国歌として法制化されていない。
コメント:「子どもに聞いたら、学校では国歌を習ったことも、歌ったこともないと言っています。『式』というものがなく、入学時には『ウェルカム集会』が開かれ、卒業時は『卒業ピクニック』に行きまし� ��。国歌を歌うのはスポーツ観戦の時くらいです」(子どもをイギリスの小学校に通わせていた母親)
どのような数学のdindは、アルバート·アインシュタインが好きでしたか?
<フランス共和国>
学校では:入学式・卒業式といった「式典」がない。通常、学校では演奏されない。
メモ:第二次世界大戦中、ナチスに銃殺された17歳のレジスタンス闘士ギイ・モケの「愛国的」な手紙を、サルコジ大統領が全国の高校で朗読するよう命じたところ、「歴史教育への政府干渉だ」として教師や歴史学者から抗議が噴出。
ギイ・モケの母校への大統領訪問も、生徒の抗議デモによってキャンセルに。
同校教師たちも大統領及び教育省の命令を拒否する声明を出した。
<ドイツ連邦共和国>
学校では:入学式・卒業式といった「式典」がない。
学校で国歌は教えない。
メモ:第二次世界大戦中は、国歌がナチス・ドイツにより国威発揚に利用されたため、戦後はこれが禁止され、ベートーヴェンの「歓喜の歌」が代用されていた。現在は元の国歌が復活したが、歌詞は第3節のみが使われている。
コメント:「ヒトラーを生んだドイツでは、国旗・国歌や愛国心は、とてもデリケートな問題です。みんなで国歌を歌い、ドイツ人としての誇りを前面に打ち出した2006年のワールドカップは、まさに例外的な出来事でした」(ドイツ在住実業家)
<イタリア>
学校では:入学式・卒業式といった「式典」がない。
通常演奏される機会はない。
コメント:「『オー・ソレ・ミオ』もそうですが、国歌は『宴会的な集まり』の時に、皆で楽しく歌う曲の一つです」(子どもをイタリアの小学校に通わせている母親)
オオカミの活動を叫んだ少年
<ロシア連邦>
学校では:入学式・卒業式で国歌を流すが、義務規定はない。
メモ:スターリン時代を思い起こさせる「ソビエト連邦国家」の歌詞をプーチン大統領が修正し、2001年にロシア連邦の国歌として復活させた。
コメント:「歌詞を知らない生徒も多く、斉唱しない、あるいは国旗を掲揚しないからといって処罰を受けるなどということは考えられません。ソ連時代ならそういうこともあったかもしれませんが・・・」(モスクワ在住ロシア人女性)
<中華人民共和国>
学校では:月曜朝の斉唱が義務付けられている。
また「国旗法」により、全日制学校での国旗掲揚が義務付けられている。これを尊重しなかった場合に「侮辱罪」の規定がある。
メモ:国歌「義勇軍行進曲」は、1935年の抗日映画『風雲児女』の主題歌。
<大韓民国>
学校では:式典で愛国歌を歌い、国旗に敬礼する。
メモ:正式に制定された国歌がなく、愛国歌がこれに代わる。一般的に愛国歌に反感を持つ人がいないので、斉唱が問題視されることはない。ただし、「エホバの証人」は国旗への敬礼を拒否している。
コメント:「韓国には『エホバの証人』にかかわっている人が14万人もいます。しかし、愛国歌や国旗に対する儀礼の問題� �処罰されたという話はきいたことがありません」(韓国在住の大学教員)
<カナダ>
学校では:各州政府や教育委員会の判断による。
毎朝国歌を流す学校も。斉唱の義務はない。
メモ:政府機関のみ国旗掲揚義務及び尊重義務があるが、罰則はない。
<スウェーデン>
学校では:国旗は教師に一任。国歌は特に教えない。
メモ:正式な国歌として法制化されていない。民謡のように気軽に楽しく歌われている。
観光統計が重要である理由
<デンマーク王国>
学校では:入学式・卒業式といった「式典」がない。
学校行事ではほとんど歌われない。
国旗掲揚は一般的に行われている。
メモ:デンマークには二つの国歌がある(王をテーマにしたものと、国土の美しさをうたったもの)。
<スイス連邦>
学校では:国歌を歌うことはほとんどない。
メモ:連邦政府は「国歌は市民の好みで決めるのがいい」という考えで、法制化には消極的だった(「試験期間」を経て、81年に正式な国歌として制定)
<オーストラリア共和国>
学校では:国旗・国歌は特に扱わない。
メモ:第二次世界大戦後、新国歌を公募。
楽曲にはモーツァルト最後の作とされる「フリーメーソンのためのカンタータ」が選ばれた。
<ベルギー王国>
学校では:国旗掲揚の義務はなく、国歌は教えていない。
メモ:歌詞にはフランス語版とオランダ語版がある。
<オランダ王国>
学校では:国旗掲揚、国歌斉唱は特にない。
メモ:現存する国歌としては世界で最も古い。
<スペイン>
学校では:国歌「グラナデラ行進曲」には歌詞がないので斉唱されない。
国旗・国歌に関する規定はない。
メモ:歌詞のない国歌を持つ国は世界でも珍しい。
<ネパール>
学校では:王制時代は、校舎内に王と后の写真を飾り、国歌も毎朝斉唱した。
メモ:2006年に王制が廃止され、国王を讃える内容だったそれまでの国歌が停止された。
2007年8月、一般公募により、多民族国家にふさわしい「何百もの花束」を新国家に制定。
コメント:「王制時代も国歌を歌わない人が処分されたという記憶はありませんが、王制に反対を唱える人は罰せられるか刑務所行きでした」(日本在住のネパール人男性)
<インド>
学校では:毎日の朝礼で国歌斉唱する。歌う時は直立不動の姿勢をとる。
しかし外国人の生徒もいるため、強制はしない。
メモ:アジア人で初めてノーベル賞を受賞したインドの詩聖タゴールの作。独立記念日・共和国記念日やスポーツイベントのほか、あらゆる式典で斉唱される。
コメント:「インド人は、国歌も国旗も神聖なものとして敬っています。大統領府に掲揚されている旗は、砂埃などで汚れやすいため、6時間おきにきれいな旗と取り替えられます」(インド人学校教師)
<日本>
学校では:本公演をご覧ください。
メモ:明治維新後間もない1870年、天皇を求心力として国歌への帰属意識を高めるべく、薩摩藩の大山巌らが「君が代」の古歌を選出。国歌の歌詞と しては世界最古といわれる。
*************************************
以前、shiraさんの記事でも取り上げておられましたように()、国旗・国歌が必須の厳粛な式典どころか、入学式・卒業式すら「世界標準」ではありません。
個人的には好みではありませんが、国旗や国歌を学校の式典に取り上げることが悪いとは思いません。ただし、その条件として、
・そうすることは世界各国のなかではかなり少数派であることを国民が知っていて、
・現場(理想的には学校単位、少なくとも教育委員会単位)で自由に議論して、自発的に選択した時
という2点を満たしてほしいと思います。人に強制しないことは言うまでもありませんね。
世界の事情も知らされず「そうすると決まったことだから」という理由で行われるとすれば、それは知性を損ない、本来の意味の教育からはずれる、単なる刷り込みにすぎないと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿